Research

研究

研究紹介

① α線放出核種を搭載したモノクローナル抗体を用いた革新的な白血病治療法の開発を目指す研究

急性骨髄性白血病の長期生存率は未だ5割に届かない。その主な原因は抗がん剤治療後の抵抗性獲得と再発である。すなわち、抗がん剤治療後も骨髄中の微小環境(ニッチ)に留まる白血病幹細胞が治療抵抗性を獲得し、再発に関与しているためと考えられている。われわれは白血病幹細胞がCD82抗原を高発現し、抗がん剤への抵抗性獲得やニッチへの接着に中心的な役割を果たしていることを明らかにした。そこでCD82に対するモノクローナル抗体を白血病マウスモデルに投与したが、マウスの延命効果はわずかであった。より強い殺白血病細胞効果を得るためにCD82抗体に放射線核種を付与することを思いついた。
放射線核種のなかでもα線はβ線に比べて、線エネルギー付与(LET)が非常に高く、組織内の飛程が非常に短いため、α線放出核種を抗体に搭載してニッチに存在する白血病幹細胞に集中させることで、正常組織への副作用を回避しながら、高い治療効果が得られるのではないかと考えた。そこで本研究ではCD82抗原を標的とした抗体をα線放出核種アスタチン-211(211At)で標識した抗体薬を作製し、白血病幹細胞の根絶を目指す革新的な核医学治療法を開発する。CD82に対するモノクローナル抗体は細胞工学研究所(大阪)で作製、アスタチンは本学の先端臨床研究センターで作製する。

学会発表や論文等

  1. Oriuchi N, Aoki M, Ukon N, Washiyama K, Tan C, Shimoyama S, Nishijima KI, Takahashi K, Ito H, Ikezoe T, Zhao S. Possibility of cancer-stem-cell-targeted radioimmunotherapy for acute myelogenous leukemia using 211At-CXCR4 monoclonal antibody. Sci Rep. 10(1):6810, 2020.
  2. 第61回 日本核医学学会学術総会 (2021.11.4-11.6,名古屋,WEB)
    趙松吉,粟生木美穂,趙景敏,右近直之,下山彩希,西嶋剣一,鷲山幸信,高橋和弘,伊藤浩,織内昇,池添隆之
    急性骨髄性白血病における211At標識CD82抗体の治療効果
  3. 第61回 日本核医学学会学術総会 (2021.11.4-11.6,名古屋,WEB)
    下山彩希,粟生木美穂,趙景敏,右近直之,西嶋剣一,鷲山幸信,高橋和弘,伊藤浩,織内昇,池添隆之,趙松吉
    ヒト急性骨髄性白血病マウスモデルにおける211At標識抗CD33抗体の体内動態

② トロンボモジュリン変異体を用いた移植後合併症予防薬の開発

TME5による内皮保護作用 血管内皮細胞上に存在するトロンボモジュリン(TM)は、複数の領域から構成され、血液凝固線溶系を制御する重要な蛋白質です。遺伝子組み換えTM製剤はTMの細胞外領域よりなり、2008年5月からDIC(播種性血管内凝固症候群)治療薬として広く臨床使用されています。
わたしたちは、豊富な本剤の使用経験の中から造血幹細胞移植後の重篤な合併症を基礎疾患として発症したDIC患者において著効例を経験し、本剤は抗凝固作用以外に血管内皮保護作用を有することを世界で初めて見出して報告しました(Bone Marrow Transplant. 46:616-8;2011, Bone Marrow Transplant. 45:783-5;2010)。培養細胞を用いた試験管内実験の結果、TM製剤が細胞増殖刺激シグナルERKの活性化を介して抗アポトーシス蛋白質Mcl-1を発現誘導して血管内皮細胞を保護すること、そしてその活性は上皮細胞増殖因子(EGF)様構造の4番目と5番目(TME45)に存在することを明らかにしました(Arterioscler Thromb Vasc Biol. 32:2259-70,2012)。さらにその後の研究で内皮細胞保護作用は40アミノ酸からなる凝固系に全く作用しないTME5に局在することを発表しました(Bone Marrow Transplant. 52:73-9;2017)。さらにその活性は、19アミノ酸からなるCループに局在することを明らかにしました。

学会発表や論文等

  1. Wang X, Pan B, Honda G, Wang X, Hashimoto Y, Ohkawara H, Xu K, Zeng L, Ikezoe T. Cytoprotective and Pro-Angiogenic Functions of Thrombomodulin Are Preserved in the C Loop of the Fifth Epidermal Growth Factor-Like Domain. Haematologica. 103(10):1730-1740, 2018.
  2. Pan B, Wang X, Nishioka C, Honda G, Yokoyama A, Zeng L, Xu K, Ikezoe T. G-protein coupled receptor 15 mediates angiogenesis and cytoprotective function of thrombomodulin. Sci Rep. 7(1):692. doi: 10.1038/s41598-017-00781-w, 2017.
  3. Pan B, Wang X, Kojima S, Nishioka C, Yokoyama A, Honda G, Xu K, Ikezoe T. The Fifth Epidermal Growth Factor-like Region of Thrombomodulin Alleviates Murine Graft-versus-Host Disease in a G-Protein Coupled Receptor 15 Dependent Manner. Biol Blood Marrow Transplant. 23(5):746-756, 2017.
  4. Pan B, Wang X, Kojima S, Nishioka C, Yokoyama A, Honda G, Xu K, Ikezoe T. The fifth epidermal growth factor like region of thrombomodulin alleviates LPS-induced sepsis through interacting with GPR15. Thromb Haemost. 117(3):570-579, 2017.
  5. Ikezoe T, Yang J, Nishioka C, Umezawa K, Yokoyama A. Thrombomodulin blocks calcineurin inhibitor-induced vascular permeability via inhibition of Src/VE-cadherin axis. Bone Marrow Transplant. 52(2):245-251, 2017.
  6. Chi S, Ikezoe T. Disseminated intravascular coagulation in non-Hodgkin lymphoma. Int J Hematol. 2015;102:413-9.
  7. Ikezoe T. Thrombomodulin/activated protein C system in septic disseminated intravascular coagulation. J Intensive Care. 2015 Jan 7;3(1):1. doi: 10.1186/s40560-014-0050-7.
  8. Ikezoe T, Yang J, Nishioka C, Yokoyama A. Thrombomodulin alleviates murine GVHD in association with an increase in the proportion of regulatory T cells in the spleen. Bone Marrow Transplant. 2015;50:113-20.
  9. Ikezoe T. Pathogenesis of disseminated intravascular coagulation in patients with acute promyelocytic leukemia, and its treatment using recombinant human soluble thrombomodulin. Int J Hematol. 2014;100:27-37.
  10. Chi S, Ikezoe T, Takeuchi A, Takaoka M, Yokoyama A. Recombinant human soluble thrombomodulin is active against hemophagocytic lymphohistiocytosis associated with acquired immunodeficiency syndrome. Int J Hematol. 2013;98:615-9.
  11. Ikezoe T, Takeuchi A, Chi S, Takaoka M, Anabuki K, Kim T, Sakai M, Taniguchi A, Togitani K, Yokoyama A. Effect of recombinant human soluble thrombomodulin on clinical outcomes of patients with coagulopathy after hematopoietic stem cell transplantation. Eur J Haematol. 2013;91:442-7.

③ チロシンキナーゼ阻害剤を用いた治療

みなさんがよくご存じの通り、イマチニブをはじめとするBCR/ABLチロシンキナーゼ阻害剤の登場で慢性骨髄性白血病の治療成績は一変しました。一方で、これらのチロシンキナーゼ阻害剤を使用することで、これまでの治療薬では見られなかった副作用も出現することが明らかとなってきました。なかでも第二、第三世代のチロシンキナーゼ阻害剤による心血管病変は患者さんの生命予後を大きく制限するため、その発症メカニズムを明らかにして、予防する手立てを見出すことは非常に重要な課題となっています。わたしたちは培養血管内皮細胞を用いた研究を行い、チロシンキナーゼ阻害剤が血管内皮細胞に及ぼす影響を詳細に検討することでその機序を明らかにし、安全に患者さんにチロシンキナーゼ阻害剤を投与できる治療方法の確立を目指しています。

④ 急性肺障害(ALI)/急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対する新たな治療戦略

研究目的

敗血症やCOVID-19等の重篤な感染症を契機に発症するALI)/ARDSは致死率が極めて高く、治療法の確立が急がれている。ALI/ ARDSの発症機序は、未だ十分に解明されていない。我々はLPS吸引によって誘導されたARDSマウスを用いて、TAM受容体Merの阻害剤UNC2250及びTAM受容体阻害剤(c-Met阻害剤)BMS77706がマウスモデルのARDS病変を著明に抑制することを見出し、ARDSの新規治療戦略の可能性を提示した。

研究成果

Growth arrest-specific 6(Gas6)は、TAMファミリーの受容体チロシンキナーゼ(Tyro3、Axl、Mer)と相互作用することにより、止血や炎症に顕著な影響を及ぼすとされている。と相互作用する。今回、重症敗血症や敗血症性ALI/ARDS患者の血漿中Gas6と可溶性Merの濃度が、ARDSを発症していない敗血症患者に優位に高いことを見出した。そこで、Gas6-MerシグナルがALI/ARDSの病態に重要であるかどうかを調べるために、LPSを吸入させたモデルマウスにおいて、LPS誘発ALIに対する選択的Mer阻害剤(UNC2250)静脈内投与の効果を検討した。選択的Mer阻害剤及びTAM受容体阻害剤(c-Met阻害剤)BMS77706は、LPS誘発ALIにおけるGas6及びMer発現を過剰発現する好中球及び単球の浸潤、重度肺損傷、活性酸素種増加を顕著に抑制した(図A, B, C)。ヒト肺大動脈内皮細胞では、LPS は内皮一酸化窒素合成酵素、トロンボモジュリン、血管内皮カドヘリンの量を減少させるが、これらの反応は 選択的Mer阻害剤で処理することによって抑制された。また、選択的Mer阻害剤はヒト好中球様細胞株HL-60細胞およびマウス単球/マクロファージ細胞株RAW264.7細胞のLPS依存性の細胞増殖増加及びアポトーシスの亢進を阻害した。これらのデータは、選択的Mer阻害剤がALI/ARDSにおける高度の炎症反応に対する治療戦略としての複数の有益な効果を示した。

学会発表・論文等

学会発表
  1. 第81回 日本血液学会学術集会 (2019.10.11-10.13, 東京)
    古川未希, 王 新涛, 大河原浩, 深津真彦, Alkebsi Lobna, 小川一英, 池添隆之
    ARDSの新規治療ターゲット:Gas6-Merシグナル
  2. 第83回 日本血液学会学術集会 (2021.9.23-9.25, WEB)
    深津真彦, 王 新涛, 大河原浩, アルケブシロブナ, 古川未希, 深見美和, 深見伸一, 杉本浩一, 小川一英, 池添隆之
    Mer阻害を標的とした敗血症性ALI/ARDS治療:LPS誘発モデルにおける炎症反応の抑制効果の検討
  3. Furukawa M, Wang X, Ohkawara H, Fukatsu M, Alkebsi L, Takahashi H, Harada-Shirado K, Shichishima-Nakamura A, Kimura S, Ogawa K, Ikezoe T. A critical role of the Gas6-Mer axis in endothelial dysfunction contributing to TA-TMA associated with GVHD. Blood Adv. 2019;3(14):2128-2143. doi: 10.1182/bloodadvances.2019000222.
  4. Fukatsu M, Ohkawara H, Wang X, Alkebsi L, Furukawa M, Mori H, Fukami M, Fukami S, Sano T, Takahashi H, Harada-Shirado K, Kimura S, Sugimoto K, Ogawa K, Ikezoe T. The suppressive effects of Mer inhibition on inflammatory responses in the pathogenesis of LPS-induced ALI/ARDS. Sci Signal. 2022;15(724):e abd2533. doi: 10.1126/scisignal.abd2533.

⑤ 多発性骨髄腫細胞と骨髄間質細胞間におけるgrowth arrest-specific 6(Gas6)が寄与するオートクライン・パラクライン機構の解明

研究目的

多発性骨髄腫は多彩な単クローン性免疫グロブリン(M蛋白)および骨髄腫細胞と骨髄の間質細胞の細胞間相互作用によって産生されるサイトカインなどの液性因子によって多彩な臨床症状を呈する疾患であり、その病態には未だ多くの不明点があります。プロテインCの補因子として知られるGas蛋白群の一員であるGas6(growth arrest-specific 6)は受容体型チロシンキナーゼ(Tyro3, Axl, Mer)のレガンドであり、自己免疫疾患や炎症病態への関与が報告されています(Cell. 54:787-793, 1988 PLos One. 10:e0133940, 2015 J Cell Physiol. 204:36-41, 2005)。
本学トランスレーショナルリサーチセンターでのDNAマイクロアレイの結果にて、多発性骨髄腫患者の骨髄サンプルでGas6が著明に高発現していることが見出されました。骨髄腫患者の骨髄免疫染色においても、骨髄腫細胞を示すCD138陽性細胞がGas6強陽性を示し、骨髄患者の血清Gas6濃度も有意に増加していました。我々はいくつかのヒト培養骨髄腫細胞においてもGas6を高発現していることをフローサイトメトリーで確認しました。しかしながら骨髄腫の病態にGas6シグナルが寄与する詳細なメカニズムは未だ明らかではありません。骨髄腫細胞は骨髄微少環境に左右され多彩な病態を来たします(Haematologica. 99:163-171, 2014)。また、我々は骨髄腫細胞自体がGas6を高発現するだけでなく、骨髄間質細胞がGas6を産生することを見出しました。骨髄間質細胞が分泌するGas6を介したパラクライン作用が骨髄腫細胞の増殖を増強している可能性が示唆されました。これらの結果は骨髄腫の病態にGas6を介したオートクライン/パラクライン機構が重要な役割を持つ可能性を示唆すると考えられます。
本研究は骨髄腫の病態・進展の分子機構の一端を明らかにするとともに、Gas6が骨髄腫の病勢を反映するバイオマーカーであることを明らかにすることを目的としています。

研究成果

多発性骨髄腫細胞と骨髄間質細胞における
Gas6が寄与するオートクライン・パラクライン機構
多発性骨髄腫患者の骨髄サンプルを用いたDNAマイクロアレイ法及びGas6免疫染色を行ったところ、CD138陽性骨髄腫細胞でGas6が高発現していました。さらに、多発性骨髄腫患者の血清中Gas6濃度をELISA法にて検討したところ、健常人に比べ骨髄腫患者の血清中Gas6濃度は有意に高値でした。ヒト培養骨髄腫細胞株RPMI-8226及びAMO-1においてGas6発現をフローサイトメトリー法で検討したところ、それら骨髄腫細胞株もまたGas6を高発現していました。また、骨髄腫細胞の病態・進展には骨髄微少環境が重要であることが知られています。そこで、ヒト培養骨髄間質細胞株HS-5のGas6発現、細胞増殖に関与するサイトカインIL-6発現をELISA法で検討したところ、HS-5はGas6及びIL-6を有意に分泌していることが分かりました。
次に骨髄腫細胞のアポトーシス及び細胞増殖におけるGas6の役割を検討しました。骨髄腫細胞株にリコンビナントGas6及びHS-5の培養上清を添加したところ、骨髄腫細胞株のアポトーシス抑制と細胞増殖、接着分子ICAM-1発現増加が誘導されました。抗Gas6中和抗体はそれらの反応を有意に抑制し、さらに抗Gas6中和抗体はリコンビナントGas6及びHS-5培養上清によって誘導されるERK活性、Aktリン酸化、NF-κBリン酸化を抑制しました。
これらの結果はGas6がオートクライン・パラクライン機構を介した骨髄腫の病態・進展に重要な役割を演じていることを示しました。次にGas6受容体TAMファミリーMer、AxL、Tyro3のいずれの受容体がGas6の関連するシグナル伝達に重要な受容体であるかを検討しました。DNAマイクロアレイ法では骨髄腫患者の骨髄腫細胞がMerが高発現していることを示しました。MerTK siRNAを用いたMerTK阻害は骨髄腫細胞におけるGas6及びHS-5培養上清が誘導するアポトーシス抑制及び細胞増殖を抑えました。これらの結果はGas6/Mer/ERK経路、Gas6/Mer/Akt/NF-κB経路が骨髄腫の病態・進展に重要なメカニズムであることを明らかにしました。
骨髄腫細胞の増殖に接着分子ICAM-1が重要であることが知られていますが、骨髄腫細胞株において抗Gas6中和抗体はHS-5培養上清が誘導するICAM-1発現及びサイトカインIL-6発現増加を抑えました。
本研究は多発性骨髄腫の病態においてGas6が寄与するオーグライン/パラクライン機構の重要性を明らかにしました。さらに、Gas6/Merシグナル伝達経路が多発性骨髄腫の新たな治療ターゲットとなる可能性を見出しました。

⑥ 同種造血幹細胞移植関連GVHD及びTMAにおけるGas6/MerTKシグナルの役割

研究目的

同種移植後患者の血清Gas6濃度の時間的推移 同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)は造血器悪性腫瘍や造血障害における唯一の根治治療法です。しかし、移植片対宿主病(GVHD)や血栓性微小血管障害症(TMA)、免疫不全に伴う感染症、原疾患の再発等により治療成績は十分ではありません。我々はプロテインC補因子でありながら受容体型チロシンキナーゼのリガンドであるgrowth arrest-specific gene 6(Gas6)が多発性骨髄腫の病態・進展に重要な役割を担うことを報告しました(Furukawa M, et al. J Biol Chem. 292:4280-4292, 2017)。
これまでの予備実験で、血清Gas6濃度がallo-HSCT後3-5週をピークに患者体内で高値となることを見出しました(図2)。allo-HSCT後にドナー由来リンパ球による攻撃を受けたことで生じる血管内皮細胞障害がGVHD及びTMAを惹起する可能性が示唆されています。
培養ヒト血管内皮細胞を用いた我々のin vitro予備実験では、rGas6が抗凝固因子トロンボモジュリン発現低下及びAktリン酸化を介した内皮型一酸化窒素(NO)合成酵素活性低下(NO障害)を誘導する可能性を見出しました。さらに、我々はrGas6が血小板凝集能を亢進させ、血小板血栓の形成を誘導する結果を得ています。これまでGVHD及びTMAの発症トリガーとなる内皮細胞障害や免疫学的バランス破綻が寄与する病態において、Gas6関連シグナルの関連性は検討されておりません。
本研究はGVHD及びTMAの病態におけるGas6関連シグナルの役割を解明し、Gas6関連シグナルがGVHD及びTMAにおける新たな治療戦略候補となり得ることを明らかにします。

研究成果

GVHD及びTMAの病態におけるGas6の割合

  • 同種移植後の患者血清のGas6濃度は移植後3-5週をピークに増加していた。
  • 同種移植後の血清Gas6はフローサイトメトリーでドナーTリンパ球及びドナー単球由来であることが明らかになった。
  • 免疫染色でGas6及びMerTKは腸管GVHD組織で高発現していた。
  • ヒト静脈血管内皮細胞を用いたin vitro実験で、rGas6刺激は内皮機能障害(eNOS発現低下、トロンボモジュリン発現低下、接着分子ICAM-1発現増加)を誘導した。Gas6受容体MerTK阻害薬はrGas6刺激で誘導された血管内皮機能障害を有意に抑制した。
  • ヒト静脈血管内皮細胞へrGas6及びGVHD患者血清を添加すると内皮細胞のアポトーシスが誘導された。MerTK阻害薬はrGas6及びGVHD患者血清が誘導した内皮細胞のアポトーシス亢進を抑制した。
    MerTK阻害は内皮機能障害がトリガーとなって発症する血管GVHDを抑える可能性が示唆された。
  • 同種移植後の患者血清のGas6血清濃度はDダイマー増加、PIC増加と相関していた。
  • Gas6受容体MerTK阻害薬はコラーゲン及びADPなどの血小板凝集惹起物質で誘導される血小板凝集亢進を著明に抑制した。
  • ヒト静脈血管内皮細胞を用いたin vitro実験で、rGas6刺激による抗凝固因子トロンボモジュリン発現低下、プラスミノーゲン活性化抑制因子(PAI-1)増加を抑制した。

以上の結果から、血管内皮細胞障害を介してオーバーラップしたGVHD及びTMAの両病態において、Gas6/MerTKシグナルが重要な役割をもつ可能性が示唆されました。

学会発表・論文等

学会発表
  1. Miki Furukawa, Hiroshi Ohkawara, Kazuhiko Ikeda, Emi Ito, Jun-ichi Imai, Yuka Yanagisawa, Reiko Honma, Shinya Watanabe, Satoshi Waguri, Kazuei Ogawa, Yasuchika Takeishi. Autocrine and paracrine regulation by Gas 6 contributes to multiple myeloma disease progression. 第77回 日本血液学会学術集会(2015.10.16-10.18 金沢)臨床血液 56(9):442, 2015
  2. Miki Furukawa, Hiroshi Ohkawara, Kazuhiko Ikeda, Emi Ito, Jun-ichi Imai, Yuka Yanagisawa, Reiko Honma, Shinya Watanabe, Satoshi Waguri, Kazuei Ogawa, Yasuchika Takeishi. Autocrine and paracrine regulatory mechanisms of growth arrest-specific Gene 6 contribute to disease progression of multiple myeloma. 57th American Society of Hematology (ASH) Annual Meeting and Exposition(2015.12.5-12.8 Orlando, USA)
  3. Miki Furukawa, Hiroshi Ohkawara, Kazuhiko Ikeda, Koki Ueda, Akiko Shichishima-Nakamura, Emi Ito, Jun-ichi Imai, Yuka Yanagisawa, Reiko Honma, Shinya Watanabe, Satoshi Waguri, Kazuei Ogawa, Yasuchika Takeishi. Autocrine and paracrine interactions by Gas 6 signaling pathways via IL-6 between MM cells and BMSCs. 第78回 日本血液学会学術集会(2016.10.13-10.15 横浜)臨床血液 57(9):1445, 2016
  4. Sho Takeyasu, Hiroshi Ohkawara, Koichiro Fukuchi, Wang Xiangmin, Koki Ueda, Kazuhiko Ikeda, Kazuei Ogawa, Takayuki Ikezoe. A critical role of growth arrest-specific gene 6 in the pathogenesis of HSCT-associated thrombotic microangiopathy. 第79回 日本血液学会学術集会(2015.10.20 東京) 優秀ポスター賞受賞
論文

Miki Furukawa, Hiroshi Ohkawara, Kazuei Ogawa, Kazuhiko Ikeda, Koki Ueda, Akiko Shichishima-Nakamura, Emi Ito, Jun-ichi Imai, Yuka Yanagisawa, Reiko Honma, Shinya Watanabe, Satoshi Waguri, Takayuki Ikezoe, Yasuchika Takeishi. Autocrine and paracrine interactions between multiple myeloma cells and bone marrow stromal cells by growth arrest-specific gene 6 cross-talk with interleukin-6. J Biol Chem. 297:4280-4292, 2017

賞与

認定公益信託 日本白血病研究基金 平成29年度研究賞
福島県立医科大学 血液内科学講座 大河原 浩
GVHD及びTMAの病態におけるGas6関連シグナルの役割を解明し、Gas6関連シグナルがGVHD及びTMAにおける新たな治療戦略候補やバイオマーカーとなりえることを明らかにする

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